その瞳に映すもの
だけど、そんな僕の思いは粉々に砕け散
ることになった。あまりにも衝撃的なこと
を言われたせいか、僕はその話をしていた
時の2人の顔は全く覚えていない。かろうじ
て覚えているのは、2人に対してこう言った
ことだ。
「そうなんだ……。わかったよ。……あ
のさ、お父さんとお母さんにとって、僕って
一体何だったの?僕はお父さんとお母さん
に褒めて欲しくて、認めて欲しくて習い事
や勉強を頑張ってきたつもりだったんだけ
ど……多分、2人にとって僕は、2人の恋人
以下の存在なんだよね。だって、恋人にな
るには一緒に食事に行ったり、遊びに行く
ことをやったりするよね……。でも、お父
さんとお母さんは、僕と一度も一緒に出掛
けたことが無いこと知ってる?……僕ね、
今日は誕生日プレゼントとして、一緒に出
掛けたいって言うつもりだった。毎年僕の
誕生日プレゼントに物を貰ったことはあっ
たけど、一緒に何かをすることは一度も無
かったから、僕は、一緒に出掛けて、そこ
で食事をしたり、遊びに行くことをしてみ
たかった……。だけど、今日、この話を聞
いた後だと、とてもじゃないけど、言えない
よね。僕、お父さんとお母さんには大切に
されて愛されていると思っていたけど、2人
にとって僕は2人の恋人以下の存在で、一緒
に暮らしたくないってことだったんだ
ね……。……何も分かってなくて、ごめんな
さい。これから、新しい人生を歩む2人にア
ドバイスというか、最初で最後のプレゼン
トにこれだけは伝えるね。この先、その恋
人と結婚して子どもが生まれるとなった時
は、僕と同じような子育てをするのは辞め
た方が良いよ。子どもって勝手に育つもの
じゃないし、僕みたいにするくらいなら生
まない方がよっぽど良いよ。だって、2人と
も自分が1番でしょ?僕もよく分かってない
けど、少なくとも、普通の親ならもっと子
育てに参加しているはずだよ。せめて、子
どもが生まれたなら、物心がついてから一
度くらいは一緒に出掛けた方が良いんじゃ
ない?もう少し、生んだ責任というか、親
としての自覚を持った方が僕は良いと思う
よ。……申し訳ないけど、もう、2人の顔見
たくないから、これで、お別れにして欲し
い。……今まで育ててくれて、ありがとう
ございました。僕のこれから住むところと
か詳しいことは、この家に通ってくるお手
伝いさんに紙の資料と共に伝えて欲しい。
多分、僕にとっての親って2人よりお手伝い
さんだと思うから。僕の今後のことをお手
伝いさんに伝えて、そのお手伝いさん経由
で僕は、今後のことを知りたいから。も
う、僕は2人には絶対に会いたくない。……
僕もお父さんとお母さん……2人とは絶縁し
たい。……僕のことはどうか忘れて……多
分、今までも特に考えたこと無かったのか
もしれないけど、もう、2人の子どもだった
僕のことなんて、いないものとして、2人と
も新しい人生を歩んでください。……僕
も、もう、お父さんとお母さんには何も求
めないから。……さようなら。」