その瞳に映すもの

 そうやって走った先に辿り着いたのは、

地元でも有名な高台のある公園だった。


 家から、約30キロ程の距離にある公園

で、普通に考えたら、走って行くような場

所ではない。でも、僕はマラソン大会があ

るとよく参加していたり、日頃からランニ

ングもしている為、体力があった。走る格

好をしていなくても、体には何の違和感も無

く、少し疲れたなくらいの感覚だった。こ

れもきっと、頭の中が整理できていないか

らだろう。


 高台で景色を見る時には、もう夕方だっ

た。幸いにも周りに人気は無く、僕は1人で

景色を見ていた。僕にとっては非常事態だ

ったけれど、景色はいつもと変わらない。


 いつも通り綺麗な景色だった。僕は、も

うこの景色を見るところにはいたくなかっ

た。だから、最後の思い出として、この景

色が僕の15歳の誕生日プレゼントで、生ま

れ育ったこの街とのお別れとして記憶に残

しておこうと思った。
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