スパダリな夫はケダモノな本性を隠せない
 なにより、義姉である霧子が心底困っている様子だ。力になれるのならば、協力したいと思う。

 悠真に自分の気持ちを伝えると、なぜだか困ったように眉尻を下げてこちらを見下ろしてくる。

「凪沙のことだから、俺がダメって言ってもやりたがるでしょう?」
「う……っ」

 その通りなので、彼から目線をそらす。すると、彼はため息交じりで痛いところを突いてくる。

「俺のお嫁さんは、誰かに何か頼まれると断れないお人好しだもんね」
「うう……っ。で、でもね、悠真くん。悠真くんのお姉さんが助けを求めてきたんですよ? 義妹として協力したいし……」

 スポンジをキュッキュッと握りしめながら彼を見つめる。

「霧子さんに頼ってもらえたのが、嬉しくって……」

 小椋家は、誰もがハイスペックだ。隣にいるのもおこがましいと思えるほど、美形揃いな上に仕事もできる人たちばかり。
 そんな人たちと肩を並べるなんてできない凪沙は、少しだけ気後れしていたのだ。

 だけど、特技がない凪沙を頼ってくれている。その事実に心が弾んだのは素直な気持ちだ。
 
 ――やっぱり、ダメかなぁ。

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