スパダリな夫はケダモノな本性を隠せない

　すぐさま霧子に快諾の返事をすると、明日からぜひ来て欲しいと泣きつかれてしまった。
　現在、クリニックはかなり大変な事態になっているらしい。早急にスタッフが欲しいというのが電話越しからも伝わってきたほど。

　彼も霧子の声が漏れ聞こえていたのだろう。柔らかい笑みを浮かべて、一つ大きく頷いた。
　明日から行ってあげてほしい、そういうことなのだろう。

　大丈夫です、と伝えて通話を切りながらソファーに座ると、彼は隣に座ってきた。
　そして、そのまま彼は凪沙を腕の中に引き込んでくる。

　キュッと抱きしめたあと、彼はとても切なそうに、そして残念そうに呟いた。

「今日は早めに寝た方がいいね。久しぶりの仕事だし」
「え？」

　時計の針を見れば、そろそろ十時だ。いつもこのぐらいの時間に風呂に入り、そのあとはお察しの通りである。

　その日のうちに眠れるなんてことはなく、大体が一時過ぎだ。
　今夜もそんな流れになってしまうのか、そんな危惧を感じていると、彼はコツンとおでこを突き合わせてくる。

「今日は凪沙の体温だけ感じて眠ることにするよ」
「ど、どうして？」