スパダリな夫はケダモノな本性を隠せない
 だけど、それは本当に最初だけ。だんだんと不安がこみ上げてきてしまったのだ。
 それは、あんなに毎日続いていた愛の睦み事が全くなくなってしまったからである。

 最初の三日間は『仕事に慣れるまではって言っていたものね』と達観することができた。
 悠真はとても優しい人だ。凪沙が仕事で疲れているだろうと思って、手を出さなかっただけ。そう思えたからだ。

 しかし、働き出してから一週間が経過。今は土曜日の夜。明日はクリニックは休みで、いくらでも眠っていることが可能な日だ。
 それなのに、愛しい夫は穏やかな寝息を立てて眠ってしまっている。
 
「キスとハグしか、してないんだよ?」

 思わず恨み節が出てしまう。それに気がつき、慌てて口に手を当てた。

 何をわがままなことを言っているのだろう。自分勝手すぎる考えに、嫌気が差してきた。
 あれだけ新妻らしいことがしたいから、抱き潰されることは避けたい。そんなふうに思っていたくせに。
 それなのに、今度は手を出されないから寂しいなんて勝手すぎるだろう。

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