スパダリな夫はケダモノな本性を隠せない
 もしかして、知らず知らずのうちに彼を拒もうとしていたことを、悠真は気がついていたのかもしれない。

 もう、嫌気が差してしまったのだろうか。視界が涙で滲んでいく。
 それでも彼のぬくもりが欲しくて、布団の中に潜り込む。
 ふんわりと彼の香りがし、体温で包まれる。いつもなら優しさと幸せを感じるはずなのに、今は彼が遠い存在に思えて仕方がない。
 
「大丈夫。私が仕事を辞めれば、今までみたいに戻るはず」

 そんなふうに自分に言い聞かせるのだが、なんだかとてもむなしく感じる。

 二人には倦怠期なんて関係ない。そんなふうに思っていたのは、ほんの少し前。
 言葉にはしたくないけれど、実は倦怠期を迎えてしまったのではないか。
 そう思うと悲しくなってきてしまう。

 悠真の背中にピトッと寄り添い、嗚咽しそうになるのを堪えた。

 このときはまだなんとか自分をごまかすことができたのだが、そのあとも彼は凪沙に触れることはなかったのである。
 
「いってらっしゃい、悠真くん」
「うん、言ってくるね。ああ、そうだ。今夜は遅くなりそうだから、先に眠っていていいよ」
「……わかりました」

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