スパダリな夫はケダモノな本性を隠せない
 無理矢理笑顔を作りながら、凪沙特製のお弁当を手渡す。
 それを受け取りながら、彼は満面の笑みを浮かべる。

「凪沙、いつもありがとう。お弁当、いつも楽しみなんだ」
「本当? よかった!」

 彼の役に立っている。それがわかってホッとしたのと同時に、嬉しさが込み上げてくる。
 だが、すぐにその気持ちはクシャッと潰れてしまう。

「でも、凪沙も仕事をしているんだから。無理は禁物。だから、明日からはお弁当作らなくていいからね」
「え? 大丈夫だよ。これぐらい――」

 これぐらいさせて、と言おうとしたのだが、彼にチュッとキスをされて声を封じられてしまう。

「ああ、ごめん。そろそろ行かなくちゃ」

 慌てた様子で玄関を出て行く悠真の後ろ姿を見て、胸がズキズキと痛んだ。

 この状況は、本当に自分が望んでいたものだったのだろうか。

 悠真の役に立ちたい。新妻らしいことがしたい。そんなふうに思っていた。
 だけど、それは悠真からの愛を感じられるからこそ思えることだったのに……。

 表面上は、きっと仲がいい新婚夫婦に見えるはず。だけど、本当のところはどうなのだろう。
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