スパダリな夫はケダモノな本性を隠せない
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 ――一人で来てしまった。

 ここは、都内にあるホテルのカフェだ。ジャズの音色が静かに流れる、大人な空間である。

 一人で来店している女性もいて、さほど居心地の悪さを感じはしない。
 だが、それでもホテルのカフェに夜一人でやってきたことがなく、ドキドキしてしまう。
 慣れないことはしない方がいいという暗示だろうか。

 今夜は金曜日だ。まだ明日一日仕事は残っている。
 本来ならさっさと家に帰って、ゆっくり休んだ方がいいはず。
 だけど、帰りたくなくて仕事帰りに一人で食事を済ませたあと、フラフラとこのホテルにやってきたのである。

 このホテルには、一度悠真と来たことがあった。
 アフタヌーンティーが有名で、優雅にお茶の時間をしたのがとても懐かしく感じてしまう。

 ここに足を伸ばしたのは、そのときの幸せな気持ちを思い出したかったからかもしれない。
 ふぅと息をこっそり吐き出したあと、注文していた紅茶に口をつける。

 今夜、悠真は帰りが遅くなると午前の診療が終わった頃に連絡があった。
 仕事なのかと聞いたのだが、なぜか歯切れが悪い返事が来たことにショックを覚える。

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