スパダリな夫はケダモノな本性を隠せない

5

５

「悠真くん！？」

　まさか彼がこんなところにやってくるなんて思いもしなかった。

　凪沙が名前を呼んだため、今この部屋に入ってきた人物が凪沙の夫だと理解したのだろう。
　諏訪は立ち上がり、彼を睨み付ける。

　そんな諏訪を、彼は負けじと睨む。だが、明らかに悠真の方が一枚上手で、背筋が凍るほどの怖さを感じた。

「君の元に彼女が行くことはない。一生だ」
「……っ」
「それに、彼女は小椋になったんだ。改めてほしい」

　諏訪を牽制する冷たく鋭い声が部屋に響く。すると、ちょうど義姉夫婦もやってきたのを視界の端で捉える。

　異様な空気に包まれた空間に居心地の悪い思いがした。
　呆然として彼を見上げていると、悠真は凪沙を抱き上げてくる。

「悪いけど、姉さん。この子は何があっても手放さないから」
「はいはい」
「あと、スタッフの教育もしておいて。既婚者に手を出すなんてあり得ない」

　あまりに冷たい声に、その場にいた誰もが圧倒される。
　すると、霧子は小さく息を吐き出したあと、諏訪に声をかける。

「諦めなさい、諏訪くん。見ての通り、全然拗れていないから。この二人」