スパダリな夫はケダモノな本性を隠せない
「……そのようですね。何か彼女が勘違いして悲しんでいただけですよね、これ」

 霧子は諏訪に「そういうことよ」と苦言を呈したあと、「犬も食わない夫婦の話は、家でしてちょうだい」と言われ、彼らが頼んでくれていたタクシーに押し込まれてしまった。

 そのまま車は動きだし、悠真があの場にいたのは義姉夫婦が呼び出ししてくれたからだと教えてもらう。
 
「俺は凪沙が無理をしないか心配だったから、姉さんに〝ちゃんと見ていて〟ってお願いしておいたんだけど……。まさか、凪沙を狙う男の出現を教えられるとは思ってもみなかった」

 それは凪沙も同意見だった。鈍感だとはよく言われるが、まさか諏訪が凪沙に対してあんな想いを持っていたなんて……。

 そこで、ふと一緒に受付業務をしていたスタッフの言葉を思い出して頭を抱える。

 彼女はいち早く諏訪の気持ちを察していたのだろう。
 だからこそ〝世の中には人妻だろうと横恋慕してくる人もいるから気をつけた方がいい〟そんな忠告をしてくれたのだ。

 ようやく何もかもが繋がった。だが、まだわからないことは存在している。
 悠真があのホテルで女性と密会していた件だ。

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