スパダリな夫はケダモノな本性を隠せない
 現在、凪沙は世間で言う新妻だ。小椋凪沙。なかなかにいい響きである。
 そんな甘い雰囲気に包まれている小椋家ではあるのだが、ここ最近になり凪沙に悩みができてしまった。

 ヨイショ、とベッドから立ち上がる。だが、うまく立つことができない。
 昨夜も大変激しく愛されてしまったからだろう。キビキビと歩くことは不可能だ。
 言うならば、生まれた子鹿のような足取りで、ゆっくりと歩を進める。
 
「悠真くん?」

 時計を確認すれば、すでに朝の十時すぎ。誰もいないとわかっていても、彼の名前を呼ばずにはいられなかった。

 こんな時間に彼がいたら、仕事に遅刻したということだ。だから、いないことはいいことなのだけど、それはそれで寂しくも感じてしまう。わがままなものだ。

 ダイニングに行くと、そこには朝食の用意とメッセージカードが置かれていた。

『昨夜もかわいかったよ。起きたらご飯食べてね。いってきます』

 最後に〝チュッ〟というリップノイズが聞こえそうなほど、甘い言葉が綴られている。

 だが、そのメッセージカードと朝食を見て、小さくため息が零れてしまう。
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