スパダリな夫はケダモノな本性を隠せない
 それ以上は言葉にならなかった。声を上げて泣き出した凪沙を見て、悠真はとにかく慌てている。

 泣かないで、なんて彼は言うが、誰が泣かせてきたというのか。
 もう、イヤだ。そんなふうに思ったとき、悠真の携帯が鳴り響く。

「ああ、クソッ! こんなときに誰だ!」

 悠真らしからぬ言葉遣いで携帯を取り出して、ディスプレイを見つめる。
 すると、ようやく合点がいったとばかりに、凪沙を見つめてきた。

「ようやくわかった」
「え?」
「あのホテルで女性と歩いているところを見たんだろう?」
「はい」

 涙でグチャグチャの顔で頷くと、彼はホッとしたように表情を緩める。

「それ、ホテルの企画担当の女性だから」
「え……、嘘じゃ――」
「嘘なんてつくはずない。とにかく、今からそれを証明してあげるから」

 そう言うと、彼は通話に出て「申し訳ないのですが、今夜一部屋取れますか?」と言い出した。

 目を見開いて驚いていると、悠真はにっこりと優しくほほ笑んでくる。

 どうやら部屋をリザーブできたようで、彼は凪沙の手を引いて再び外へと出た。そして、彼の運転で件のホテルへと向かう。

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