スパダリな夫はケダモノな本性を隠せない
 そこで明らかになった事実に、膝から崩れ落ちそうになった。

「彼女は、企画部の部長をされているんだ。ここのホテル、内部での制服とお客さんの前に立つときの制服が違うんだ」

 確かにこの色と形のスーツに見覚えがある。だが、クラークにいる女性とは違った制服だ。
 フロントスタッフと同じスーツを着ていれば、さすがに間違うことはなかったはず。
 だが、色も形も違うスーツを着た女性が悠真の隣にいれば、勘違いしても仕方がないだろう。凪沙はその事情を知らなかったからだ。

 ――だから、勘違いしちゃったのね……。

 証拠とばかりに、部長の彼女は内部勤務の女性社員も何人か連れてきてくれた。彼らの説明通りだ。

 こうなってくると平謝りしかない。企画部長の彼女に頭を下げ続けていると、綺麗な笑みを浮かべてこちらを見つめてくる。

「小椋さま、奥様をとても愛されているんですよ。だから、他の女性と関係を持つなんて考えられないと私は思います。でも、これ以上は、私の口からは言えませんが」

 ほほ笑ましいといった様子で、彼女は悠真と凪沙二人を見比べている。
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