Lemon Sour〜愛を信じたあの頃〜
そんな捨てられた子犬みたいな目で見ないでよ
こっちまで悲しくなる

「…とりあえずどっか入ろ?飲みながら話してよ」
優しく声をかけると彼は苦笑しながら歩きだした
その顔があまりにも辛そうで、胸が苦しかった


『複雑な家庭』
『情緒不安定』
『彼氏依存』
『発狂や自殺行為』
聞けば聞くほど付き合っていくには難しそうな彼女
過度な八つ当たりなんて日常茶番事だった

それなのに何言われてもユーマは慰め続けて
理由もないのに謝り続ける
些細なことで暴言吐かれ
なだめるために何時間もかかる

『リスカ』
『激しい束縛』

いわゆるメンヘラ…?
ただ、かわいいものじゃない
今まで育ってきた環境も関係あるだろうが、重症だ

前回あまりにも幸せそうだったから
こんなことになってるなんて…

ユーマは我慢する日々に疲れてしまったんだ

泣きそうなユーマを見て胸がチクリと痛む


それでも、複雑な家庭だからと庇いながら話すんだ

「何言っても責められるし何が正解かわからない…
でも俺の彼女だから、俺が守らなきゃいけないし…
でも、これ以上どうすればいい?」

そんな顔しないでよ…


私だったら…

そんなこと言わせない

そんな顔させないのに…


私だったら…



「…がんばったね…」

この4年後、私は同じ言葉を同じようにユーマにかけることになる
もっと、近い距離で
もっと、私にとって大きな存在で


「彼女のこと、まだ好き?」

「うん」

「そっか…」

すごいな
こんなに我慢して辛い思いしてるのに、好きと言い切れる

彼女、幸せじゃん
こんなに愛してくれる人、中々いないよ


こんな人に一途に愛されたら、どれだけ幸せなんだろう

もっとユーマのこと考えてくれる人と付き合えれば、ユーマもたくさん笑えるはずなのに


私だったら、もっとユーマのこと考えるよ
もっとずっと優しい言葉で支えるよ

暴言吐いてもなければ、束縛だってしていない…
それでも私は元カレに振られた


あぁ、彼女さんが、羨ましい




それから、定期的にユーマと飲むことになった
時には私から声かけて、時には向こうから

最初の相談から間もなく、彼女とは別れた報告を受けた

でも、それで良かったと確信できたのは、それからユーマの表情が明るくなったから

まるで捨てられた子犬が、新しい家族に巡り会えたように
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