手を伸ばせば、瑠璃色の月
『今皆様にお見せしているのは、春の夜空です。皆様の正面、北の空で一際明るく輝いているのが北斗七星、7つの星で構成されています』


360度、どこを見渡しても終わることのない星のカーテン。

目の前に浮かび上がる7つの星が、ナレーションの声と共に赤い線で結ばれた。


『北斗七星の中の2つの星を北に伸ばしていくと、北極星にたどり着くことが出来ます。北極星の別名は”心星”、全ての星はこの北極星を中心にして回っているんです』


北斗七星から伸びた線が、待ち焦がれたように北極星と手を繋いだ。

どの星よりも大きく威厳があるその星は、私の瞳の奥に吸い込まれていく。


凄い、星ってこんなにも綺麗だったんだ。


地球に向かって優雅に流れ落ちる星、紅に色を染めて消えていく星。

宇宙はとても広くて、まるで自分が銀河の中にぽつんと立っているみたいで。

その壮大な景色を眺めているだけで、自分の汚い感情がみるみるうちに浄化されていくのが分かる。


不意に視界が歪んで、慌てて瞬きを繰り返した。


底なし沼に片足を突っ込み、俯いてばかりの私は陸に上がる事は叶わないと思っていたのに、

蓮弥さんが初めて、星降る夜の美しさを教えてくれた。


”きれい”って、泣きたくなる程に感動する時に紡ぐ言葉なんだね。
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