手を伸ばせば、瑠璃色の月
「あの、今日は本当にありがとうございました。お昼ご飯もプラネタリウム代も払って頂いて、本当になんて言ったらいいか…」
「は、何いきなり改まってんの」
後ろ髪引かれる思いでプラネタリウムの施設を後にした私たちは、あのイタリアンレストランを通り過ぎて駅の改札に到着した。
父のせいで予定が狂い、こんなに早く解散する事になってしまったのに、蓮弥さんは嫌な顔1つしなかった。
それどころか、彼はチケットを予約したり奢ってくれたり、かなりの優男ぶりを発揮していて。
改札を通る前に深々と一礼をすれば、冷ややかな視線が後頭部に突き刺さる。
「だから、全部俺の勝手だって言ってんの。礼を言うのはこっちの方だろうが」
イラついているのか何なのか、蓮弥さんの口調はいつにも増して鋭く感じた。
「俺は、お前が楽しめたならそれで十分だから」
俺が、お前を夢の世界に逃がすから。
蓮弥さんが紡ぐ言葉に、肩がびくんと揺れる。
「逃がすって、」
「そのままの意味だよ。1ヶ月…まさかこれで終わらせようと思ってないよな」
そっと顔をあげれば、取り敢えず電車賃、と、私の目の前に千円札が差し出された。
「うわっ、いや、受け取れません本当に!」
「お前、マジで俺に何回あの台詞言わせる気だよ」