手を伸ばせば、瑠璃色の月
2
*
「ただいまー」
余韻に浸ったままの私が家に帰ったのは、4時を少し過ぎた頃だった。
「おかえりー。プラネタリウム楽しかった?」
「うん、すっごい綺麗だった!岳も暇な時行ってみなよ」
リビングに入ると、テレビでゲームをしていた岳がそれを一時中断して話しかけてきた。
自然な笑顔で答えれば、彼は同意の代わりに薄い微笑みを称えて頷いてくれる。
「あら、おかえり。お父さんが帰ってくる前に家事は全部終わらせたいから、知世も部屋着に着替えたら?岳も、宿題終わらせちゃいなさい」
と、そこで、カウンターの奥からエプロン姿の母が顔を出した。
こんな時間から凝った夕飯を作っているからか、若干の疲れが滲んだその瞳は私の表面だけを捉え、奥の奥まで踏み込もうとはしない。
私が誰とどこで何をしてきたのか、それを聞く余裕すらないのだろう。
「はーい」
母が今見ているのは、あと1時間足らずで父が帰ってくるという現実だけ。
その事が分かっている私は、素直に頷いてその場を後にした。
後ろから、ゲーム機を手にした岳の足音が追いかけてくる。
せっかく作った思い出が、綺麗を綺麗と言えた心が、
この家に居るだけでぼやけて消えてしまいそうだった。
「ただいまー」
余韻に浸ったままの私が家に帰ったのは、4時を少し過ぎた頃だった。
「おかえりー。プラネタリウム楽しかった?」
「うん、すっごい綺麗だった!岳も暇な時行ってみなよ」
リビングに入ると、テレビでゲームをしていた岳がそれを一時中断して話しかけてきた。
自然な笑顔で答えれば、彼は同意の代わりに薄い微笑みを称えて頷いてくれる。
「あら、おかえり。お父さんが帰ってくる前に家事は全部終わらせたいから、知世も部屋着に着替えたら?岳も、宿題終わらせちゃいなさい」
と、そこで、カウンターの奥からエプロン姿の母が顔を出した。
こんな時間から凝った夕飯を作っているからか、若干の疲れが滲んだその瞳は私の表面だけを捉え、奥の奥まで踏み込もうとはしない。
私が誰とどこで何をしてきたのか、それを聞く余裕すらないのだろう。
「はーい」
母が今見ているのは、あと1時間足らずで父が帰ってくるという現実だけ。
その事が分かっている私は、素直に頷いてその場を後にした。
後ろから、ゲーム機を手にした岳の足音が追いかけてくる。
せっかく作った思い出が、綺麗を綺麗と言えた心が、
この家に居るだけでぼやけて消えてしまいそうだった。