手を伸ばせば、瑠璃色の月
「夢って、どういう事なの?」


未だにショックから立ち直れていない美陽がゆっくりと顔を上げると、勿体ぶるかのように足を組んだ彼は自信満々に言葉を紡ぎ始めた。


「だって、自分の部屋の中に泥棒が居て、下手したら殺されかねない状況なのに恐怖を感じないなんておかしいと思わない?それに、ものを盗む前に“盗みます”なんて宣言する泥棒、世界中の何処を探しても居ないと思うよ」

「あー、…まあ、それはそうかも…」


悲しいかな、彼の言葉は完全に的を射ていて言い返す余地もない。

実際、私も泥棒が居なくなった直後に夢の可能性を疑っていたし。


口ごもった私に絡みつくような視線を送った彼は、畳み掛けるように質問をしてきた。


「知世はさ、泥棒が逃げる瞬間も見たの?」

「うん。窓から飛び降りたから慌てて下を見たんだけど……見つけられなかった、」

「ああ、泥棒が消えた時点でそれは夢だね」


自分で説明しながら、語尾が小さくなるのを感じる。


「因みに、朝起きてから盗まれたネックレスの有無は確認した?」


探偵ぶった朔からの新たな問いを受け、今度はぐっと言葉に詰まった。


「窓の近くにあるアクセサリーボックスの中に入れてたんだけど、…確認は、してないです」

「うん、確認してない時点で夢確定だね」
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