手を伸ばせば、瑠璃色の月
「そんな無防備な場所にアクセサリーボックスを置くから、そういう変な夢を見るんじゃなくて?配置を変えた方が良いわよ」


恨めしげに朔を睨みつければ、勝ち誇ったようにガッツポーズをする彼と、心底安堵したかのように微笑む美陽の姿が視界に映り込む。


彼らの姿を見て徐々に自分の失態に気づき始めた私の頬が、段々と熱を帯びるのを感じた。


「そうだよね…うん、夢だ。ごめんね美陽、変な心配させちゃって」


しどろもどろに平謝りをすると、根の優しい彼女は笑いながら首を振った。



そうだよね、泥棒が自室に居るだなんて有り得ないよね。

赤くなっているであろう頬を押さえながら、何度も自分に言い聞かせる。


美陽に伝えるまでは昨夜の事が現実に起こった事だと思っていたけれど、ネックレスの有無も確認していないし、朔の言う通り、あれは夢だったに違いない。

普通に考えて、高級住宅街に…まして三階建ての我が家に忍び込もうとする事自体が有り得ないのだから。



「夢、だったんだよね…」


そう思えば思う程に納得出来てしまうのに、

何故か、あの泥棒の光り輝く碧眼が、やけに脳裏にこびり付いて離れなかった。


あの人がアクセサリーボックスの中を見ていたのも、音を立てずにベッドの下に潜ったのも、碧く吸い込まれそうな瞳で私の事を見てきたのも、全部鮮明に覚えているのに。
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