手を伸ばせば、瑠璃色の月
そうして、彼女が読んでいたのであろう一文を目で追った私は、

「…!?」

驚きのあまり、声を失ってしまったんだ。


何故なら、そこに書いてあったのは、

『夢占いにおける“泥棒”は、思いがけない幸運がもたらされる前兆と言えるでしょう。アクセサリーを盗まれる夢は、自分を苦しめていたものから開放される事を意味しています』

例え占いであっても、思わず叶って欲しいと願いたくなるものだったから。


「幸運の、前兆…」


噛み締めるように、その言葉を口にする。



…もしかしたら、これって。

淡い期待が胸の中を渦巻く。


でも。


「“自分を苦しめていたものから解放”だって。…知世って、何かから苦しめられてたっけ?」

「え?…ああ、ううん」

「何よ、どっちなのかはっきりしなさいよ」


朔にいきなり話を振られ、慌てた私は“否定”を意味する言葉を発してしまったんだ。


美陽のごもっともすぎる突っ込みにも笑顔で返したけれど、上手く笑えていたかな。


「…まあ、どちらにせよ良い事があるって事でしょ。良かったじゃん」

「…そうだね」


朔の言葉は余りにも軽くて、自分が考えている事なんて言える雰囲気ではなかった。
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