手を伸ばせば、瑠璃色の月
彼らは、私の家族の歪んだ関係について何も知らない。

でも、私があからさまに家族の話題を避けたり、人の感情の変化に敏感になっているから、何かを感じ取っている可能性は否定が出来ない。

とは言っても、二人はそんな私の態度に口出しをした事はなくて。

私が助けを求めれば力になってくれるのかもしれないけれど、どうしても他人に迷惑をかけたくないと考えてしまう私は、彼らに対して何も口にする事が出来なかった。



夢占いなんて、所詮は根拠のないお遊び。

私が父から逃げるという事は、私に向かうはずだった魔の手が母か弟へ向けられる事を意味する。

父が私達を牛耳る限り、私の未来には何の希望もない。


…でも、それでも。

昨夜の夢…なのか現実なのか、とにかくあの出来事が、夢占いのように“自分を苦しめていたものから解放”してくれて、私の未来を変える足掛かりになればいいな、と、そう願わずにはいられなかった。




「じゃあさ、その幸運が舞い込んでくる為にも」


私がそんな事を考えているとは露知らず。


時計をちらりと見て、まだ担任が来る時間ではない事を確認した朔が、にこりと笑って口を開いた。


「保健室、行ってきなよ」

「…へっ?」


…いきなり何を言い出すの、この人。

夢占いと保健室は、何の脈絡もないのに。
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