手を伸ばせば、瑠璃色の月
…母は、完全に父に洗脳されている。

子供達がこんな仕打ちを受けても尚、父から逃れようと考えてすらいないのだから。



「ごめんね、ちゃんとスマホ見とけば良かった。連絡、してくれてたんだよね…?」


リビングに残された私は、反省の色を見せつつ再度弟に話し掛けた。

保健室で寝る直前、睡眠の妨げになるから、とスマホをマナーモードにしてしまった事が裏目に出てしまった。


「良いよそんなの。俺は、姉ちゃんがこんな痛い思いしてるのもう見たくない」


中学生になったのに、まだまだ泣き虫な可愛い弟。

ぶんぶんと首を振って瞳を潤ませた岳の頬を、私は画鋲が刺さったままの手でそっと撫でた。


白い肌に突き刺さる金と流れ出る赤が、実に奇妙な対比を生み出していた。


「…私は、岳が痛い思いをしなければそれでいいの」


にこり、と。

微笑んだ衝動で流した涙がどちらのものだったか、判断する術はなかった。

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