手を伸ばせば、瑠璃色の月
それに、もし父が夜中に私の部屋に侵入して床で寝ている私を見つけたら、それはそれは汚らしい言葉と共に罰を受ける事になるはず。


どちらに転んでも虐待の可能性から逃れられない私が出した結論は、”家族の誰かが傷つくくらいなら、私だけが犠牲になったほうがマシだ”という事だった。



「でも…」

「別に床で寝るだけだよ?明日からはベッドで寝るし、そんなに心配する事ないって」


未だに渋い顔をする弟の肩を叩いた私は、安心させるように再び笑ってみせた。






「…無理、痛い…」


その日の夜。


弟の前であんなにも余裕ぶった態度を取っていた私は、窓とベッドの間の床にバスタオルを敷いてやっと寝る態勢に入っていたものの。

いざ眠りにつこうとするとどうしても傷跡が痛むうえ、それと共に父が放った罵詈雑言が思い出されるせいで、瞼を閉じる事すら出来ずに痛みと闘っていた。


帰宅した瞬間から地獄の暴雨風に揉みくちゃにされていたけれど、お風呂に入った時が一番酷かったように思う。

肋骨が痛いせいで腕は上がらず、傷口に水が入って悶絶し、挙げ句の果てには泡が傷口を塞いだせいで叫びかけた。

お風呂に入ったせいで出血は再開するし、あまりの痛さに歩く事もままならなくて。

父にあの無様な姿を見られなかった事だけが、唯一の救いといったところか。
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