手を伸ばせば、瑠璃色の月
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その後、いつの間にか眠っていたのか、それともずっと泣いていたのか。
カタンッ……
私は、数日前と同じ音を聞いて我に返った。
丸まった背中の上を、秋の涼風が吹くのが感じられる。
…あ、私、この感覚覚えてる。
涙に濡れたままの目を瞬かせてゆっくりと顔を上げた私は、凝り固まった身体を無理やりに動かして後ろを向いた。
「あ……」
口の中が乾燥しているからなのか、声にならない声が漏れる。
だって、開かれた窓枠に寄り掛かるようにして立っていたのは、
「っ……」
あの日、私が目にした泥棒だったから。
黒ずくめの服もフードもマスクも、光り輝く瑠璃色の左目も、数日前と何も変わらない。
彼は私がなくしたはずのネックレスを手にしたまま、床に座る私を驚いたように凝視していた。
その姿を見た途端、これが夢だと一瞬で頭が理解した。
そして、それと共に歓喜の気持ちまでもが湧き上がってくるのを感じる。
自分の部屋に音もなく入ってきた不審者を目の前にしても、もう何にも怖くない。
だって、夢の中に泥棒が出てくる事は幸福の前兆を意味しているのだから。