手を伸ばせば、瑠璃色の月
困惑気味になりつつも、

「夢占いで、アクセサリーを盗む泥棒の夢を見たら、それは幸運の前兆だって教えて貰ったんです。…だから、泥棒さんが言いたいのは、私の夢に一ヶ月間出てきてくれるから、それを現実逃避として捉えて欲しいって、…そういう事、ですよね」

と、泥棒さんが言わんとしていたことを自分なりに解釈して伝える。

自分でも自信が持てなくて、語尾は小さく消えてしまった。


すると。


「夢…?……あーなるほど、そういう事か」


何か気に食わない事でもあったのか、彼はしばらく私の言葉を反芻していたけれど、

「ああ。…月を道しるべにして、お前の夢に出てきてやるよ」

最終的には、マスクとフード越しでも分かる笑顔を見せてくれたんだ。

泥棒さんの優しさに触れられた気がして、嬉しさのあまりこちらまで笑顔になってしまう。


「自己申告してくるなんて、面白い泥棒さんですね」

「いや…でも、さすがに毎日は現れねえよ。いいな」


照れ隠しをするように口を開けば、泥棒さんもそう念押ししてくる。


「次にお前と会うのは…そうだな、月が、」

「月?」


予想だにしていなかった単語に首を傾げると、

「ああ」 

彼は、夜空に浮かぶ少しばかり欠けてきたウサギの餅つき場を指さした。


「あの月が、有明の月になった時だ」

「有明の月…?」
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