手を伸ばせば、瑠璃色の月



数日後の夜、私は夢を見た。


何故それが夢と分かったかなんて、最早語らなくてもいいはず。


「……」


だって、私の部屋の窓際に、あの泥棒さんがこちらに背を向けて立っていたのだから。

泥棒さんの後ろには、丁度半分に欠けた月が煌々と光を放っている。


あ、泥棒さん。

また来てくれたんだ。


嬉しくなった私は、泥棒さん、と声を掛けた。

一拍遅れて、彼の足が動いてこちらに振り返ろうとする。


すると。


「いつも現れて知世の物を盗んでいるのは貴方ね!観念しなさい!」


どこからか甲高い声が聞こえたと思ったら、部屋のドアを勢い良く開け放して、制服姿の美陽が現れたんだ。


「え、美陽!?何してるの!?」


何で、美陽が私の家にいるの。

全く状況理解が出来ない私は深夜なのに大声をあげてしまい、慌てて手で口を覆った。


「何って、貴方を守りに来たのよ!当たり前でしょう!」


武器の代わりにスリッパを手にした有り得ない格好の彼女は、じりじりと泥棒さんに向かって距離を詰めていく。


その時、またもや誰かの足音が聞こえたと思うと、

「美陽、危ないからウチに任せて!…全くさあ、こんな所に忍び込むくらいならアルバイトでもしてお金貯めればいいのにねー」

今度は、開け放たれたドアから朔がひょっこりと顔を覗かせたんだ。
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