手を伸ばせば、瑠璃色の月


「えっ……、!?」


自分の声に驚いた私は、ぱちりと目を開けた。

目の前に広がるのは無機質な天井で、そっと起き上がれば、いつもと何ら変わりのない自分の部屋を見渡せる。


「…夢、だったんだよね?」


夢と現実の狭間で揺れ動く自分を律するべく頬をつねれば、案の定痛みを感じられる。


これは現実、さっきのは夢。

部屋に勝手に友達が侵入してくるなんて有り得ないし、ましてあの泥棒さんと鉢合わせするなんて事も有り得ない。


…でも。


「何で、泥棒さんの目が黒かったんだろう」


もう一度枕に頭をつけた私は、小さな声で疑問を吐き出した。


今まで私が見た泥棒は、右目は黒色で左目が瑠璃色だった。

見つめられる度に美しいと思っていたのだから、間違いない。

けれど、今回の彼は明らかに同一人物なのに両目の色が黒かったんだ。


…いや、たかが目の色でどうこう言うのもおかしいけれど、何かが違う。


「何で?」


まだ眠気から覚め切っていない頭で思考を巡らせ、ふっと窓の方を向いた。

空の上には、黄色に染まった半月がぽかりと浮かんでいる。


「…ん?」


黄色に染まった、半月?

確か泥棒さんは、有明の月の日に会いに来ると言っていたのではなかったか。
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