手を伸ばせば、瑠璃色の月
急いでスマホを開いて検索をかけると、有明の月はその名の通り、“夜が明けても空に残っている月”を指す事が分かった。

そして、満月を過ぎて新月を迎えるまでの月は全てその名称が当てられているものの、“下弦の月を過ぎて左側だけが光っている月”を示す事があるという事も。


多分、泥棒さんの言った有明の月は、左側だけが光っている月を特定して示しているのだと思う。

そう考えると、半月…下弦の月の見える日に彼が現れたというのは何とも非合理的な話で。


それに、

「あの月、黄色じゃなかった…」

夢で見た月の色を思い返した私は、スマホを閉じながら軽く眉間に皺を寄せた。

夢の中で見た月はまるで、黒い画用紙にぽたりと白い絵の具が垂らされたような、お世辞にも綺麗とは思えないものだったから。


「んー、」


何で、何でだろう?

ぎゅっと目を瞑り、考える事数秒。


はっと目を開けた私は、震える声で答えを口にした。


「私、夢をモノクロで見てるんだ…!」


今まではそれが当たり前だったから、違和感にすら気が付かなかった。

私の夢には色がないから、月が不自然に見えてしまうのも合点がいく。


…それなら、今まで泥棒さんの目が碧く見えていたのはどう説明すればいい?



「いや、」


ここで、ある答えに辿り着いてしまった私は思わずがばりと起き上がった。
< 74 / 122 >

この作品をシェア

pagetop