手を伸ばせば、瑠璃色の月
あ、このまま飛び降りて警察に行く気だ。

そう理解するまでに、時間は掛からなかった。


「待って!」

気づいた時には、椅子を蹴って飛び出していた。


今にも飛び降りそうな泥棒さんの腕を掴み、自分の方に勢い良く引き寄せる。


「っ、」


首だけを回して振り返った泥棒さんの瞳の奥に見えた感情は、私の思い切った行動に対する驚嘆と、逮捕される未来に対する少なからずの恐怖。


「私、警察に通報はしません」


泥棒さんが部屋の床に両足をつけたのを確認してからそう囁けば、

「は…?」

本日何度目だろうか、彼の目が零れ落ちそうな程に大きく見開かれた。


「泥棒さんが本当は優しい人だって、知ってますから」


泥棒さんの袖から手を離しつつ、言葉を続ける。


「私と逃げてくれるって…私の一ヶ月をあげるって約束、まだ覚えてますよね、?」


目の前に立つ泥棒さんは、ただ黙って私を見下ろしたまま。


美陽が教えてくれた夢占いは意味がなくなってしまったけれど、

彼と交わした約束は、まだ生きているはずだから。



「…お前、それ本気で言ってんのかよ?俺、罪人だぞ」

「私のネックレス、返してくれたじゃないですか。それに、」


含みのある言葉を紡ぎながら、私は泥棒さんの目を見つめ返した。
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