手を伸ばせば、瑠璃色の月
まるで、初めて彼と出会った時のように息を飲んだ。

だって、私の目の前には、誰がどう見ても美青年だと評したくなるような男性が立っていたのだから。


彼が私に素顔を晒した事が示すのは、もうここから逃げないという強い意志。



「俺がお前の父親に見つかるのもまずいし、…次会う時は、お前も外に出て来いよ」


お前には、俺の罪に目を瞑ってくれた借りがあるからな。

魅力的な唇が紡ぐ言葉は、彼が私との約束を守ってくれる事を示していて。


「っ…、はい!」


胸がざわざわして、自分の肩にのしかかった重みが一瞬だけ消えた気がして。

私は、彼の前で満面の笑みを浮かべたんだ。




その後、彼は簡単に自己紹介をしてくれた。

泥棒さんの本名は西之園 蓮弥(にしのその れんや)といい、私より二つ上の大学一年生だという。

大学進学と共に南山市に越してきて、今はアパートに一人暮らしをしているのだとか。


その話を聞いて、もしかしたら彼はお金に困って盗みを働いたのかな、なんて考えてしまった。

まあ、それを彼に問い詰めるつもりなんて毛頭ないのだけれど。


「泥棒さんは…じゃなくて蓮弥さんは、家族、恋しくないんですか?」


彼が一通りの自己紹介を終えたところで、私は無邪気にそんな事を尋ねた。


いつの間にか、私達は横並びになってベッドに腰掛けていて。
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