手を伸ばせば、瑠璃色の月
…だって、あの姿だけを見続けていたら、蓮弥さんがいつか闇に紛れて消えてしまいそうだったから。

街ゆく人がちらちらと蓮弥さんの方に視線を送っているのは、多分彼の抜群のスタイルの良さだけが理由ではないのだろう。


蓮弥さんの事、待たせちゃったかな。

私は小走りに彼の元へと駆け寄り、トントンとその肩を控えめに叩いた。


「ん?ああ、お前か。早かったじゃん」

「おはようございます、蓮弥さん。あの、待たせてしまってごめんなさい」

「いや、俺もさっき来たばっかだし」


マスクもしていない整った顔がこちらを向き、蓮弥さんの視界の中には私の顔だけが映り込む。

今気づいたけれど、蓮弥さんは髪の毛を緩く巻いていて、そのおかげもあって彼の大人っぽさが良く表に現れていた。



「…それにしても、お前が本当に来るなんて思わなかったわ」


プラネタリウムの前にお昼を食べようという話になり、揃って駅を後にしながら、蓮弥さんがぽつりと呟いた。


「えっ、どうしてですか」

「だってそりゃあ、…俺、何度も言うけど罪人だぞ。普通、何しでかすか分かんねえ男の元にひょいひょい着いて行かねぇだろ」

「…」


目線を上げて蓮弥さんの顔色を盗み見れば、彼の目はただひたすらに真正面を見据えていて。
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