手を伸ばせば、瑠璃色の月
「俺はお前に借りがあるんだよ。一緒に逃げようって言ったのも元はと言えば俺の勝手だし、罪滅ぼしくらいさせてくれよ」

「っ…」


彼の顔つきからは怒っているようにしか感じられなかったけれど、その台詞の内容は自分を卑下しているようで。


でも、蓮弥さんにお金を使わせるわけには…。

一人暮らしならそれなりにやりくりも大変だろうし、罪滅ぼしなんて、縁起でもないことは言わないで欲しいのに。


心の中ではいくらでも言いたい言葉が溜まっているのに、そのどれもが喉に突っ掛かって外界に出てくることはなかった。

押し黙ってしまった私をちらりと一瞥した彼は、

「そういう事だから、遠慮なく選べよ。因みに俺は明太子スパゲッティ」

と、一方的に会話を終わらせてしまった。


「ごめんなさい…」


小さな声で謝れば、

「何?ボンゴレビアンコ食べんの?」

信じられない聞き間違いをしたらしい蓮弥さんの口から、思ってもいなかった商品名が発せられた。


「え、ああいや、…はい」


結局、これ以上悩むと蓮弥さんを待たせてしまいそうだったから、曖昧ながらも頷く。

語尾にありがとうございますと付け加えれば、

「おう」

店員さんを呼ぶためのベルを鳴らした蓮弥さんが、ふっと片頬を引き上げた。
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