手を伸ばせば、瑠璃色の月
そこから、二人分のスパゲッティが運ばれてくるまでにそう時間は掛からなかった。
「めっちゃ美味そうじゃん」
蓮弥さんは相当お腹が空いていたのか、商品が運ばれてくるやいなやフォークとスプーンを手に取っている。
「お前も冷める前に食えよ」
綺麗にスパゲッティを丸めながら口を開いた彼の言葉を、
「はい、」
丁度スマホを見ていた私は、ほぼ上の空で聞き流していた。
なぜなら、母から送られてきた新着メッセージに信じ難い内容が含まれていたから。
…お父さん。貴方は、いや、お前はどれだけ私を潰せば気が済むの。
何度も何度もその一文を読み直し、荒れ地と化した心に落とし込む。
「…あの、蓮弥さん、」
蓮弥さんに続いてフォークとスプーンを持った私の手の末端は、異常な程に冷え切っていた。
「ん」
「あの、…今、4時までに帰ってきてって、母から連絡があって、」
返事の代わりに、蓮弥さんがスパゲッティを食べる手を止める。
それもそうだ、だって今の時間は既に1時前なのだから。
「本当は夕飯に間に合うまでに帰れば良かったんですけど、今日は…その、父が、早く帰って来るみたいで、」