手を伸ばせば、瑠璃色の月
こくりと頷けば、

「おう。…あ、見えてきたわ」

小石を車道側に蹴り飛ばした蓮弥さんは、目の前にそびえ立つ大きな建物を顎でしゃくってみせた。



顔を上げた時に見えた蓮弥さんの顔が太陽の光に反射して煌めいていたのも、私達の歩幅がいつの間にか同じになっていたのも、

きっと、偶然じゃない。





『この度は、新南山プラネタリウムへようこそ。照明が暗くなりますので、お席からの移動はお控え下さい。…それでは皆様、頭上に煌めく星達をご覧下さい』


プラネタリウムの上映が始まったのは、私達が施設に入ってから僅か15分後のことだった。

隣同士の席に腰掛けた私達を受けいれるかのように照明が落ち、辺りは完全な暗闇と静寂に包まれる。

その感覚は、私が初めて蓮弥さんと出会った時に感じたものとよく似ていた。


「蓮弥さん、」


真っ暗で何も見えない中、そっと左隣に座る彼の名を呼ぶと、

「上、見てみ」

ギシリと背もたれが軋んだ音が聞こえたかと思うと、蓮弥さんの低い声がかなりの至近距離から鼓膜を震わせた。

驚いて振り返れば、暗闇でも見分けのつく碧眼が目と鼻の先にあって。


その碧い銀河の中で瞬いていたのは、

「うわあっ、…!」

色とりどり、大小様々に輝く満天の星空だった。
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