カオスの海に溺れるサカナは眠れない夜に夢を見る
仁那が泣き出したら、抱きしめようと思ってた。いつもそうだったから、この日もそうだと思ってた。思ってたのに……
『アタシ達……所詮、姉弟だもんね』
俺の地雷を思いっきり踏んだ仁那に、ずっと、そんな風に思ってたのかよ!? 込み上げる怒りは、冷ややかな眼差しを向ける事で、言葉にはしないまま吞み込んだ。
『そんな風に想った事、俺は一度もねーよ』あの時……そう言って、仁那を抱き寄せたなら、何か変わっていたのか? と、あとの祭りと言われても、考えずにはいられない。その日を境に、心の距離はすれ違いながら少しずつ離れていって、今となっては、物理的な距離をも生んでいる。地元の大学を希望していたはずの仁那の志望校は、俺の知らないところで、都内に変更されていた。
『行くなよ』なんて今更のセリフを素直に言えるはずもなく、ただ月日だけが流れて……会わずにいたら、忘れていけるなんて、安易な高を括ってた。離れた事で増す想いがあるなんて、知らなかった。知らなかったんだ……
『アタシ達……所詮、姉弟だもんね』
俺の地雷を思いっきり踏んだ仁那に、ずっと、そんな風に思ってたのかよ!? 込み上げる怒りは、冷ややかな眼差しを向ける事で、言葉にはしないまま吞み込んだ。
『そんな風に想った事、俺は一度もねーよ』あの時……そう言って、仁那を抱き寄せたなら、何か変わっていたのか? と、あとの祭りと言われても、考えずにはいられない。その日を境に、心の距離はすれ違いながら少しずつ離れていって、今となっては、物理的な距離をも生んでいる。地元の大学を希望していたはずの仁那の志望校は、俺の知らないところで、都内に変更されていた。
『行くなよ』なんて今更のセリフを素直に言えるはずもなく、ただ月日だけが流れて……会わずにいたら、忘れていけるなんて、安易な高を括ってた。離れた事で増す想いがあるなんて、知らなかった。知らなかったんだ……