マーメイド・セレナーデ
明るめの色に染めたのは大学以来かも、とうっすらとウインドウに映ったあたしの姿を見て思う。

立ち止まって、その視界に映すのはディスプレイされた服だと思われてるかもしれないけれど。


色んなショップを回ったけどどこも目に付くところに春物のワンピースがディスプレイされている。
1枚1枚手に取って鏡に向けてあててみる。
フィッティングルームにも入った。気に入った何枚かを候補に挙げたあとで店に向かった。



「あら、香坂さんどうしたの?」



せっかくの休みだし彼氏は、と店長の目が無言で訴えるのがすぐにわかってしまった。
それには苦笑でかわしてワンピースを手にとった。

あたしがいつもお客に接するように店長も接する。いつもと立場が逆だからか、それとも知り合いが相手をしてくれるからか、わからないけど気恥ずかしさでうまく見れなかった。

どうせなら仕事前に見たほうがよかったかも。
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