マーメイド・セレナーデ
鍵を回したとき、手応えがなくてドアを開けたら見慣れた靴が乱れて脱ぎ捨てられていた。
それを揃えてリビングに進む。



「翔太?早いね」

「あぁ、まあ」



目が合わないな、と思ったら翔太はあたしの髪を見ていた。
翔太の隣に座れば髪を掬い上げさらさらと落とす。



「わかった?」

「あぁ、」



好き好きに弄ぶのを許し、あたしと翔太の間に穏やかな時間が流れる。



「そーいや、お前癖のないストレートだな」

「昔からね」

「ずっとか?」



珍しく機嫌がいいみたいで饒舌になった翔太と会話が弾む。



「ううん、大学のときはパーマかけたりしてたわ」

「ストレート、」

「え?」

「ストレートにしとけ、いいな?」



急に声を上げたから驚いてあたしは翔太の顔を見上げた。
顔を逸らして目が合わない、けど。
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