マーメイド・セレナーデ

見えない世界

不安なんてなにもない、なんて口が裂けても言えるわけがないわ。
いつだって嫌われたくないって思ってるし、このままずっと変わらずにいれたらいいのにって思うわ。


幼いあの頃からあたしはずっと彼を想ってきたって言ったって彼を嫌いに思った時期は少なからずあった。

人の想いが変わらないことなんて幻想で夢のまた夢。
だからこの先もずっとずっと好きなんて言えない。



柔らかな朝の日差しが閉じた瞼の向こう側にも関わらず、届いて、徐々に意識が浮上する。

今日も仕事だ、と眠たい目を擦りながら起き上がる。



「翔太、翔太ってば。朝よ」



肩から落ちる布団をそのままにして、足を床に落とす。
つま先からひんやりと冷たさが伝わって来て、身震いする。



「朝、かぁ……。もうちょっとのんびり、」



寝ぼけた翔太の言葉に小さく笑みを零して、布団を飛び出した。
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