マーメイド・セレナーデ
こういう席で奥のソファーの席を勧める牧さんはフェミニストであることが窺える。
どこかで、ヒールの高い靴を履く女性は足が疲れるから、テーブル席ではソファーに座らせるのがマナー、と聞いたことがある。
あたしにしてみればソファーも椅子も、足の疲れをとるには十分だと思うのだけれど。
「喧嘩したって聞いたけど。どうせ翔太が悪いんだろ?」
注文を終えて、あたしが出て来たお冷やに口を付けたとき突然話し出した。
それまで、何も言わず。
にこにこと笑っていたというのに。
「朝会ったらあいつすげぇしょげてんの。態度は相変わらず俺様王様だけどな。どこか無理してんのバレバレ、だから俺たちがフォローしてやろうと、ね。翔太は幹彦がフォローにまわってる。幹彦に嫉妬したって話聞いたから幹彦にこっちを任せてもよかったけどな」
からかうように話す牧さんだけれど怒る気にはならなかった。
それよりも翔太がしょげてるという事実に驚いた。
「意地張んな、って言ったのに。背中を蹴る勢いで真知ちゃんのとこに追い出したのに、帰って来てみれば前日まで出張?なんだそれって話」
一気に話した牧さんは翔太にはほとほと呆れ返るといった様子。
馬にも蹴られる覚悟ありで来ました、と彼は笑った。
どこかで、ヒールの高い靴を履く女性は足が疲れるから、テーブル席ではソファーに座らせるのがマナー、と聞いたことがある。
あたしにしてみればソファーも椅子も、足の疲れをとるには十分だと思うのだけれど。
「喧嘩したって聞いたけど。どうせ翔太が悪いんだろ?」
注文を終えて、あたしが出て来たお冷やに口を付けたとき突然話し出した。
それまで、何も言わず。
にこにこと笑っていたというのに。
「朝会ったらあいつすげぇしょげてんの。態度は相変わらず俺様王様だけどな。どこか無理してんのバレバレ、だから俺たちがフォローしてやろうと、ね。翔太は幹彦がフォローにまわってる。幹彦に嫉妬したって話聞いたから幹彦にこっちを任せてもよかったけどな」
からかうように話す牧さんだけれど怒る気にはならなかった。
それよりも翔太がしょげてるという事実に驚いた。
「意地張んな、って言ったのに。背中を蹴る勢いで真知ちゃんのとこに追い出したのに、帰って来てみれば前日まで出張?なんだそれって話」
一気に話した牧さんは翔太にはほとほと呆れ返るといった様子。
馬にも蹴られる覚悟ありで来ました、と彼は笑った。