マーメイド・セレナーデ
今更なことを不安に思うのは会わない時間が長いからだわ。
顔を見ればまた安心するはず。
喧嘩さえしなければ不安がることなんてないのだから。


心の中で言い聞かす。
大丈夫、と内心何度も繰り返して携帯を無意識に握り締めた。




『明日、……』

「明日?」

『……いや、なんもねぇ』



ふと、気付く。
こうやって言葉を飲み込んで、お互いいろんなことを押し込めてるんだわ。

いつも思うの。
お互い素直に言いたいことを言えたら、再会してからも違う関係を築けたかしら。

言葉もない、数秒に考え込んで。
最初に声を出したのは、翔太。

力ない翔太の声。



『…………悪かったな、』
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