マーメイド・セレナーデ
何も気にすることがない。

その言葉の意図するところがわからなくて首を傾げて翔太の顔を覗き込むと焦れるような熱っぽい視線とぶつかって、絡めとられた。
逸らせないままでいるとその奥にある激情に引きずり込まれてしまう。

どちらからともなく距離を縮めた。



「しょ、うた……」

「んだよ、」



吐息が感じられる距離まで近付いていて、上がる息であたしは新鮮な空気を胸一杯に吸い込んだ。
苦しいわ、と目で訴えたのに翔太はその訴えをはねのけて息するあたしの口を塞いでしまう。


文句を言うのはいいけど、キスすることになんの文句はない。そのことをわかってる翔太はあたしを離してくれないの。

――でもあたしも離れたくない。
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