マーメイド・セレナーデ
「真知ちゃんは和食？」



バイキング形式のホテルの朝食はとてもいい匂いがして、忘れていた食欲を掻き立てる。

トレイを持って席に戻ればトーストとコーヒーそして果物。それだけを持って座っていた牧さんが意外だと言うように話す。

家では、翔太と暮らす家では、コーヒーやココアといった飲み物を取るせいか食事も洋風よりになっている。
べつに洋風、和風に拘りはないから気にはしていないんだけど、実家が田舎なだけにあって一人暮らしを始めるまではずっと朝は白ご飯に焼き魚、お味噌汁にお漬物といった純和風の食べ物ばかり食べていた。

朝からそんな料理作る暇が無いから洋風になってしまうといえばそうなのだけど。
こうやってバイキング形式になるとどうしても和風を手にとってしまう。

納豆だけはなんだか印象がわるいかしら、と思って手に取らなかったけど。



「へぇ、やっぱり気が合うんだな。翔太もホテルに泊まるときは大抵和食。……ってことはやっぱり朝も真知ちゃんお手製の和食だったりするわけだ？いいねぇ、翔太。愛されてるよ」



妙な勘違いをして一人で納得した牧さんはぺろりとトーストを食べて終えてゆっくりとコーヒーをすすってしまっている。
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