マーメイド・セレナーデ

想像以上の人物

「もう着くよ。車は地下にまわすからさ。出迎えがいるはずだからその子に着いてって」



移動時間は３０分もなかった。
流れる車に、どこにいても聞いたことのある社名の印字があって、想像していたものと大きく異なる現実に少し怖気づいて、ルームミラー越しに牧さんを見つめた。



「翔太の、すべてだからさ。もちろんこれ止まりになる男じゃねぇけど。……ほら、あそこに立ってる子」



日の光が遮られて暗くなったと思ったら地下に入ったらしい。
一旦、止まったのは関係者のみのゲートを通ったからか。


窓を開けて牧さんはあたしと同じくらいの女性を話し始めた。



「この子が香坂真知ちゃんね。あとはまかせるけど大丈夫？」

「はい、お任せ下さい。では香坂さん、ここからは私が案内します」



ドアを外から開けられて、信じられない待遇に緊張は高まっていくばかり。