マーメイド・セレナーデ

「アンタが翔太のオンナ？」

「はい？」



なんであたしばっかり見るのよって言い返したいけれど、我慢して下を向いてじっとしていたのにその声に不躾な声を上げてしまった。

顔を上げてこの人の顔をマジマジと見上げてしまった。
何、この男の目。あたしを見定めるように見てハンと鼻を鳴らした。

し、失礼だわっ！


見下した態度であたしの横を通り過ぎると都と呼んだ彼女に近づく。あたしもこの人に合わせて身体を向けるけれど、挑戦的に睨みつけるように見ているに違いないわ。



「都、お前仕事は」

「これも仕事よ、分かってるくせに言わないで。柏木くんから直接頼まれたの。牧くんもお願いって言うから。それよりも幹彦くんこそ、表居なくて大丈夫なの」

「翔太のオンナが来るっつーから見とこうと思って。大したことねぇな」

「……柏木くんが聞いてたら一発じゃ済まないわよ。それに、だいたい本人の前で言う者じゃないわ。ごめんなさいね、香坂さん。幹彦くん口が悪いの」

「翔太の好みっつーからナイスバディでも想像してみりゃ、これだもんな。これでタメっつーんだから笑えるよ……ぃってなぁ！」