マーメイド・セレナーデ
ちゅぷと下唇を吸われ、離れたときには少し酸欠気味。
息を整え、睨み付けるもどこ吹く風。してやった、とでもいうような顔が眼に映る。

視界の端に映った両親と祖父母は手を取り合って喜んでいる。



「確実に、広まるわね。最悪」

「俺様になんの不満があんだよ。……ヘマこくなよ」

「わかってるわよ」




あの時を思い出させるようなキスに誰も見ていないのだから抵抗すればいいのに、アルコールの入った頭は正常に働いてくれない。

そういえば、最近ご無沙汰で誰でもいいから求めてんのかしら。
だからと言って、こいつだけは願い下げなんだけど……。

なんでこんな田舎でこんな男が出来上がるのよ。
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