マーメイド・セレナーデ
「なによ、」

「別に」



深く深く求められれば少し身体を引いて遠慮する。だけども尚も追って来てあたしはどさりと倒された。見上げるのはこの男と天井だけ。
眼を合わせることが出来なくて顔ごと横へ捻った。


あたし、何も考えられない。
頭が痛い、霞がかかったみたいにぼんやりとしてもう、だめだ。



「なんでここに来たのよ、帰んないの」

「泊まってけだとよ、お前のおばさんが」

「めんどくさいわね」

「ハッ、んないつものことだろ」

「やっぱりするんじゃなかった」



話せば話すほど自分が自分でなくなって、翔太を拒めなくなりそうだわ。



「口ん中カラカラだったな」



唇に眼がいったみたいで何故か照れてしまう。
キスした相手の唇なんて見てほしくないわ、余計意識しちゃうじゃないの。
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