マーメイド・セレナーデ
「情けない顔ね、何を不安になってるのよ」

「…………お前、俺を買い被ってる」

「あたし、仕事辞めるわ」



本当は、もっと溜めて溜めて翔太を困らせてみたかった。
だけど、あたしだってずっと求めてたから。

泣きそうになりながら答えたら、いつものように強気な表情が戻ってくる。



「言うと思った」

「お母さん喜ぶわ、きっと。ずっと前から翔太のことだいすきだったもの」

「それを言うなら俺のとこもだろ。昔から真知は娘だと思ってた」


ソファに座るあたしの背もたれに近づいて、上を向かされて襲い掛かるような乱暴なキスを受けた。
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