マーメイド・セレナーデ
「どうしても欲しいとは思わないわ」



ありえない、というヒカルはもう勝負メイクばっちりだ。
おめめぱっちりでまつげがくるんとカーブを描いている。くちびるだってつやつやで、ぷるんとした潤いたっぷりのグロス。……もしかしたらグロスじゃなくてルージュかもしれない。


合コンに集まる男なんて、低脳な男しか居ないに決まってるわ、と思う。
それをヒカルの目の前で言うことなんて出来ないけれど、あたしはいつだってそう思っている。



「でも、残念!今日は真知を入れてぴったしだもん。行かないは聞かないよ。さ、行こう」

「ちょっと、待ってヒカルってば!あたし行かないわ」

「だめだって、今日は医学科の年上を集めてみましたー」



医者候補を捕まえとこう、と乗り気のヒカルに比べてあたしは気分はどん底を這っていった。



「彼氏じゃなくてもさ、友達としてキープしとけばいいじゃない、ねえ真知」

「あたし、すぐ帰るわよ」



ヒカルの思考回路には驚かされっぱなしだわ。
これ以上抵抗しても無駄だろうなってわかったから仕方なく足取りの軽いヒカルの後をついて行くことにした。
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