マーメイド・セレナーデ

微かな希望

さっぱりとしたお風呂上がり。すでに宴会場からは音が聞こえず、しーんとしていた。

自室に戻れば、あたしの布団に出ていったときの格好で寝ている翔太がいる。
顔を覗き込むと、ちくりと胸が痛んだ気がした。



「……寝顔だけは可愛いんだから」



元々整った顔をしてるからあんな俺様でなければあたしだってころりと落ちてしまっただろう。
だけど知ってしまってるのだから落ちるわけがない。そう、落ちるわけがないのだ。


Tシャツにジャージというラフな格好のまま窓の桟に座る。

星がよく見える。
あっちじゃ見えないというのに。

失態を見せないようにと思って行動したのが失敗した。翔太には逆らえなくて、流されペースに飲まれてしまえばどうなるかわかっていたのに。

翔太は周囲の望むような行動をとるから。



「帰って来た意味がないじゃない」



一人ごちてしまう。
だって、解消しに来たって言うのに。
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