マーメイド・セレナーデ
「何言ってんだ、確固たるものになったろうが」

「起きてたの?」

「起きた、」

「そっ。でも、あんたとの許婚を強めたって意味ないのよ、あたしは破棄したかったんだから」

「それは無理だな、諦めろ」



あたしじゃなくてもいい女はいっぱいいるだろうに、どうしてあたしなわけ。



「ほんと、最悪」

「最高の間違い、だろ。なんせ金も立場も顔も、全部持ってんだぞ」



年の近い女があたししかいない、と言うのが本音ってのは知ってるわ。
だからってあたしの意志は入り込めないのかしら。

許婚って、なんて古風な。



「窓閉めろ、寒い」



布団に包まったのが眼に入ったがそれは流して閉めずにまだ外を、夜空を眺めていた。


ドンッ



「閉めろ、って俺様が言ってんだろ」



ビクリと肩を震わせば窓の横の壁に片手をついてあたしを射殺すような眼で見られている。



「ごめん、」



あんな俺様と一生を共にするなんてあたしには考えられないわ。

あたしの布団を占領するのを見てどこで寝るかな、とため息をついた。
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